MTSA2019@Busan(釜山)めっちゃ長いほう

MTSA2019@Busan(釜山)めっちゃ長いほう

B4の山本です。

研究室歴代でもおそらく初の「B4にして国際学会」を経験したので、そのことをここに書きます。
熱量がやばいので、簡潔な記事を読みたい方はこちらへ
このページはあくまで個人的な所感を現在進行形でしたためたものです。

「報告」としては点数もらえないでしょう。

といっても本編は非常に長いので、数行分で簡潔に報告します。

・初めての学会は初めての国際学会で不安だったが、自らを確実に成長させてくれた
・先生や周りの人達のサポートは頼もしい
・当研究室からの参加者は皆、発表も質問もうまくできていたと思われる
・緊張はするけどパニックにならなければどうにでもなる
・質疑応答に自信がなければ質疑応答用のカンペも作るべし!
・韓国(釜山)は普通に旅行にオススメ。今度はプライベートで行きたいと思えた

長いのを読みたくない方はここでブラウザバックしていただいて大丈夫です。情報量としては上の5文と何も変わりません。自虐的にいえばただ引き延ばしてる駄文を勝手に垂れ流しているだけなので、夜中のテレビの砂嵐見てたほうがマシかと思います。嘘です、さすがにそれはない。保証します。

少々クドいところもありますが、記憶が途切れないうちに、学会の期間中にそのまま書いたものを掲載しています。これから私が、あるいはこの記事を読んだ学生さんが失敗せずに済むよう、私が学会で体験したハズカしいことも、赤裸々に綴っています。「共感性羞恥」で顔が赤くなるかもしれません。そのことをご了承ください。

ふとしたきっかけでした。6月、7月に実験をしていたら、ものすごくきれいな波形が出ました。いつ見ても心が現れるような、きれいな正弦波でした。そのまま海に出かけて、同じ波をそこから探すぐらいきれいでした。

その波形を先生に見せたところ「これは今度の学会で発表できるよ」と。当時の私はその学会が「国際学会」と呼ばれる、英語で行われる発表と知る由もなく、「はえ~……」ぐらいしか感じていませんでした。
先輩に話を伺って、その「はえ~……」が「やべ~……っぞ」に変わったのは間もなくのことです。
全編英語というのは想像を絶する過酷さです。
字幕版を選んだのに字幕が出ない映画とか、吹き替え版を選んだのに日本語の声が入ってない映画が上映されれば大クレームの嵐でしょう。
しかしあいにくながら、国際学会はそれを了解して参加するべき場所です。

私は心の中で、学会に参加する利点と欠点をすぐにカウントアップしました。
===利点===
・かっこいい
・かっこいい
・お金をもらって外国に行ける(主目的はもちろん発表ですよ!!!!)
・かっこいい
・たのしそう

===欠点===
・院試勉強が忙しい、両立できるか不安
・資格を取りたかった、その勉強時間があるか不安
・英語で質疑応答ができるか自信がない
・国内の普通の学会にさえ出たことがないのに、一段飛ばしで国際学会って本当に大丈夫か?

人間は「やる楽しさ」よりも「やらないことの言い訳」のほうを何倍もすぐに思いつくという悲しい生き物で、私も残念ながらその性に逆らうことはできませんでした。未知なこと、自分の実力を越えたことを怖がるのは、我々が社会的な動物であることの根拠でしょう。

しかし残念ながら私にとって「コクサイガッカイ」というカタそうなことばが、堪えがたい魅力であるのも確かでした。長い長い葛藤の結果(葛藤のせいで先生にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます)「院試勉強が忙しいので……」「資格勉強が……」などの理性的なセルフハンディキャップは最終的に、私の中の「はっぴょうってかっこいいんじゃね!」の原始的な感情に打ち消され、無事に今回の国際学会、MTSA2019に出席することになりました。

やることは確かに多かったです。確かに。あーめん。

まず学会に参加するためには”registration”(登録)をしなければなりません。知らなかったんですが、学会に参加するのもお金がかかるんですね。お金を払って自分の成果を発表するわけです。

「世間一般」から見れば研究者はなんと物好きなんだと思われることでしょう。

250ドル、およそ2万5千円がかかりました。後から領収書を発行することで国から返ってくるので心配する必要はありませんが。
院試が終わって合格発表を聞かないうちにスライドを作り始めました。それに並行して発表原稿もです。院試勉強の疲れからか、不幸にも生えてない親知らずが腫れてきたので抜きに行きました(これも普通に「地獄」だったのですが、本質から外れるので省略します)。パスポートも発行しにいき、海外旅行保険がついたクレジットカードを契約し……。初めてのことだらけで、とにかく疲れました。
生きることってこんなにも大変でしたっけ?

合計で6回前後の改訂の末に、ようやく発表できそうなクオリティのものが完成しました。この時点で発表1週間前。原稿を読みながらリハーサルをして先生に改善点を伺い、さらに4回ほど改訂をしました。こんなに細やかに添削に付き合っていただいた加藤先生には、感謝してもしきれません。

MTSA2019は”Microwave/THz Science and Applications”の略で、主にマイクロ波・テラヘルツ波を専門的に追究している研究者が出席する会議です。会議というか「研究会」の属性が強く、学生も参加して発表できる、とのこと。これまで日本や韓国で開催され、今年で5年目を迎えます。開催地は海雲台(ヘウンデ)。
韓国、釜山(부산)が擁する一大観光地・海雲台(해운대)は、とても情に厚い人々が住む美しい街です(私たちが日本語で会話しているのを聞き、日本語で話しかけてくださった方もいました)。治安は日本と同じかそれ以上によく、雲はるかたなびく高層ビル群が空を擦り、観光客で溢れる砂浜では日本人にとっても、あるいは韓国人にとっても異地のことばが飛び交います。

私たち(山内さん、一山さん、私)は朝5時に起床、九大学研都市駅からスカスカの貝塚線に乗り、博多港に到着しました。博多港と釜山港を結ぶ、JR九州運営の「ビートル号」という船に乗りました。飛行機で向かってもよかったのですが、起きるのがさらに1時間早くなるので船を選びました。

船長・山内さん

船酔いが苦手だという方は山内さんのように酔い止めを持ってくることをオススメします。一山さんと私はほとんど気にならない体質なので大丈夫でした。早起きで疲れて3人とも寝ていたため水平線を楽しむ余裕はありませんでしたが、3時間の海路の末に我々を待っていたのは摩天楼の群。博多出身の方には申し訳ありませんが、こんな大都会と博多を結んでもらっていることを申し訳なく思うほど、発展していました。釜山は別名を「韓国第二の街」「日本でいう大阪」と言いますが、それを身をもって体感しました。

降りてなかなかに適当な(?)荷物検査を終えると、そこには博士課程のキムさんと、キムさんのお姉さんが!
キムさんは韓国出身なので、言語面での不安は全てありませんでした。寄りかかる気満々ですみません。私は少し韓国語を予習していたので文字自体は全て読めたのですが、その意味はわからないままでした(外国人の方がローマ字を見て日本語を読むけど、その意味はわからないのと同じです)。ところどころ知っている単語があるぐらいで、聞いても意味はほとんどわかりません。だから韓国出身の方がいらっしゃる、というだけで、ものすごく不安が取り除かれるのです。

海雲台ビーチ
電車の案内板
電車の案内板

このお二方にはとてもよくしていただきました。釜山から海雲台(ヘウンデ)への道はバスと電車を乗り継がなければならず、キャッシュレス化が進む韓国では切符を買うことさえままなりません。要するに「とってもたいへん!!」ということです。私たちのためにICカード乗車券(ICOCAとかPASMOとかそういうアレと同じ)をプレゼントしてくださり、豪華な昼食(焼肉!!!)をおごってくださり、韓国の食べ物や文化について教えてくださり、移動ルートを親切に教えてくださり、海雲台の街を案内してくださり、……どれだけ我々が心理的に助けられたか、ここに書き尽くすことはできないほどです。

東横イン

ホテルは東横インでした。日本の東横インにも泊まったことがあったので、とても安心です。ダブルベッドの部屋なので全ての物が2つで1セットでしたが、ベッドの広さも2倍なのでゆったり。21階建ての東横インなんて日本じゃ絶対見られないと思います。景色は最高です。

1日目の夜は一山さん、山内さんとクッパ(ご飯に牛肉入りスープを注いだもの)を食べに行きました。山内さんが調べてくださった「人気のお店」ということでチョイス。韓国語で注文するのも恥ずかしいので少々の英語と指差しで。人間の意思疎通力の高さと、ノン・バーバル・コミュニケーションのすごさを実感しました。こちら6500ウォン(650円)也。牛肉のダシが出て、とても美味でした。

デザートは噴水通りのお店、濃厚なバニラソフトクリーム。3500ウォン、日本円で350円。
安い。安すぎる。ここが観光地であるということに鑑みれば、日本なら絶対600円は取られているであろうクオリティです。韓国は日本よりも物価が安いということを、実際に行ってみるまで知りませんでした。

それに、日本からの観光客が多いためか、街の多くのものには自然な日本語が併記してありました。電車やバスのアナウンスにも日本語が。屋台のおばちゃんは「うなぎ、安いよ!」と話しかけてきます。顔や歩き方でわかるのでしょうか。なんにせよ「未知の言語に囲まれた地で自らの母語を聞くととても安心する」という事実は、世界史の「キャラヴァンサライ」(アラビア世界の昔からのホテル)で知っていましたし、それを遅れて体感した形になります。地下鉄空港線の様々な言語のアナウンスを聞く外国人の方の気持ちがわかりました。

この日は疲れてホテルに帰ってきたため、通し練習を2回しただけで寝てしまいました。直前の練習は心理的に大きなヘルプになることを経験則的に知っていた私は、次の日の朝、6時半に起きて朗読を始めます。
できるだけ当日の環境に近づけるため、わざわざスーツを着用して、起立して練習しました。
“Thank you for the instructi……introduction, I am~~”
“Therefore, the interfered power would be……the interfered power as a function of the delay time would be~~”
そもそもからして我々の母語は日本語です。日本語でさえ読み間違えが多発するのに、英語ならなおさらです。日本人がわざわざ英語喋ってやってんだからお前らちったあ感謝しろよ!!!ぐらいのノリで読み間違いを連発……(意外とこのメンタルは大事かも)。これはいかん、緊張してるな。
しかしこの練習が功を奏したのか、東横インでの朝食は(いつものように)たくさん食べることができました。緊張で喉を通らないのではないか、食パンが喉に詰まって、そのままご臨終するのではないかとの危惧は、杞憂に終わったわけです。

キムさんに案内されるがまま到着したのはこれまた高いホテル。

ハンファ・リゾートホテル

”한화리조트 해운대”(ハンファリゾート ヘウンデ)そうそうここです。二重の意味で(”tall”と”expensive”)高そう。
会場について自分の名札とトートバッグをもらいます。クチナシで染めたかのような鮮やかな黄色と、片側の正弦波マークが特徴的。

初デートで恋人がこれだったらどう思いますか

トートバッグはだいたいの国際学会で配られ、中には、全員の予稿データが入った16GBのUSB(MTSA2019の刻印)、予稿やプログラムが書かれた冊子などが入っています。
その冊子を読んでいてあることに気が付きました。
「オーラルの発表は15分、12分が発表で、3分が質問です」と書いてあるのです。
私たちが以前受け取っていたメールには
「オーラルの発表は15分、13分が発表で、2分が質問です」と確かに書いてありました。

矛 盾 で す。

とりあえず受付の人に聞いてみたところ、「すみません、冊子が正しいです」と。
12分半ちょうどで終わるようにペースを調整していたので、それがここにきて大きく狂ったことになります。
人間は「初めて」かつ「予想外」のことに直面すると、大きく知能指数が下がります。
私は先生に「後ろの2ページを削りましょうか!」と相談しにいきましたが、先生は「こういうのはよくあることなので、結論のページだけは紹介せず、そのまま飛ばしてください」とおっしゃいました。
その一言で私は落ち着きを取り戻しました。そう、こんなハプニングは本番につきものなんだ、と。

昼食がめちゃくちゃ豪華でびっくりしました。
ここまで読んでいただいている方……そんな特殊な方がいらっしゃるとは思いませんが……から今のところ「これ、ただの旅行レポじゃん!!」という感想しか出ないようなレポですが、それを承知でもう一度言います。
昼食がめちゃくちゃ豪華でびっくりしました。曇ってるせいであんまりおいしそうに見えませんが……。

昼食

そもそも普通の国際学会は1度の”Banquet”(晩餐会)だけで終わりです。Banquetは研究者同士の交流を促すためにあります[独自研究]。食べ盛りの男子大学生にはそんな横文字は全部「バイキング」の5文字に変換されるので名前はどうでもいいのですが、何にせよ昼食まで出てくるとは思いませんでした。それがさらに豪華ときた。

白状しますが、あの時私の交感神経は発表ではなく、目の前の食べ物に対して向けられていました。小型齧歯類を狙う猛禽のごとく、ウサギを狙うキツネのごとく、自身が「食べる」という概念になりきっていました。
そうして早朝の緊張はもはやどこかに消え失せ、私はただスモークサーモンと「肉」を食うだけのマシンと化しました。食わねば戦えないのです。かつて「24時間戦えますか」というスローガンがバブル期の日本を風靡しましたが、それを借りるなら「15分戦えますか」です。短いようで長い決戦です。いや、短いな。
……飽きたので次いきます。

緊張するときほどルーチンを大事にせよ、は、私の人生の恩師、ではなく、私が今さっき考えたことばです。その箴言に従い、発表データをUSBメモリにコピーし、会場に据え置きのパソコンに移動させて、動作確認をしようと試みました。
ところがここで問題が発生しました。もうセッション開始20分前なのに、うまくページが表示されないのです。青いままの画面が出るか、出たとしてもなんか、上のほうが見切れてます。こんなことは以前にありませんでした。係員の大学生スタッフにしても初めてのことのようで、お互いにしどろもどろになりながら、動作確認を終えずにセッションが始まりました。

今回の学会は残念ながらOral Presentationをしたい学生がそんなに多くなかったのか、全体のうち2/3ほどが”invited”(招待)です。大学教授や企業の研究者、つまり「プロ」の方々が25分間、学生にみっちり自分のテーマを語り、その身をもって「お前ら、プレゼンっていうのはこんな風にするんだぞ」とレクチャーするわけです。
具体的には、原稿もまったく見ずに、スライドをレーザで指しながら発表していたり、質疑応答で流暢な英語で侃侃諤諤の議論をしたり。それが当たり前のように見えるので錯覚してしまいますが、これではまるで学生が「人間」じゃないかのようで、私はお手本のinvited presentationを見ながら「はやく人間になりたーい!」と心で叫んでいました。
結局人間になることなく私の番が回ってきました。不思議とあんまり緊張はしませんでした。練習を死ぬほどやっていて覚悟がきまったのか、食べ過ぎて副交感神経が働き、アクビが出てしまうほどでした。肝っ玉がでかいというよりハートに毛がビッシリです。
「次の発表は九大の山本さんで、テーマは……」みたいなアナウンスが座長さんから流れます。

動作確認をしていないことだけが気がかりでした。私は自身のパソコンを持って行って発表しようと試みたのですが、これが大きな過ちでした。HDMI端子にパソコンを繋いでも、青い画面しか表示されないのです。
すぐにスタッフがやってきて調整を試みますが、それも無念の失敗に終わります。
ブラックホールに巻き込まれたかのように時空が歪み、その流れは遅くなっていきます。私をあざ笑う声が聞こえます。その冷笑に私は失望と侮蔑の感情を見出しました。嘘です、話を盛りました。あざ笑う声はありませんでした。
私ははっきりと方向を変え、さきほど備え付けPCに入れていたデータを用いて発表することにしました。
すると先ほどのエラーが嘘のようにしっかりと表示。

1分半程度のいざこざで会場の皆さんの時間を奪ってしまったことを謝罪するために、”I’m sorry to take time”と申し訳程度の申し訳ありません要素をアドリブで付け加え、私の発表が始まりました。
自身をレコーダーに見立て、これまで行ってきた練習の通りに読むように心がけます。予想外のトラブルに面食らってしまいましたし、そのせいでプレゼン画面に表示された「発表時間」はめちゃくちゃ、もはや今が何分経過してて、あと何分なのかもわからない状態です。たぶんけっこう早口だったと思います。めちゃくちゃ早口でした。それでも、パニックに飲まれないよう、練習通りのペースを思い出しながら必死に。

発表自体はつつがなく終了しましたが、実はここからが本番。
“Can anyone have a question?”という座長さんの一言で、プレゼンターと聴衆の心の中でゴングが鳴ります。
質問を覚悟していた私に告げられたのは意外な一言でした。「時間が押しているので1つで」と。
私はあいにく、質疑応答でバトルを楽しめるような、血気盛んな人種ではありません。「1つで」ということはつまり、私が受ける傷も少なくなる、ということを意味します。レベルがカンストした聴衆の皆様から、レベル3の私に質問が飛んでくるわけです。
その「1つ」は、私のすぐ隣に座っていらっしゃった方からでした。

「出力のデータの波形が~~どうしてですか?」
どんな質問が来てもいいように「自己質問70本ノック」をしていた甲斐がありました。
「この質問だけはされたくないな」というような質問を70本考えて、それに自分で英語で答えをつくり、聞かれた時に答えられるように練習していました。
生まれて初めての学会が国際学会なのだから、私にこれぐらいのハンデがあってもいいはずです。レベル3の学生が研究者の方に挑むのですから。ここで失敗しようが命は取られないし、学生だからと大目に見てもらえると思いますが、私は完璧主義なので、ちゃんと準備してちゃんと答えたいのです。
私は事前に用意しておいたスライドを用いて、流暢に見えるかのような回答をしました。
正しくは、質問の意図を故意に捻じ曲げて、用意したスライドを使えるように答えました。
なかなかに卑怯な手ですが、実力的にはこうでもしないと答えられません。
とりあえず納得していただけたようで、質疑応答タイムは終わりました。
拍手の音とともに、私の初・国際学会は終了しました。
……いや、まだ終わってないですね、すみません。

先生から「お疲れさまでした」、先輩方から「よかったよ」、キムさんから「Great!緊張がなくてすごかったです」と声をかけられ、ようやく今までの苦労が報われた気分になりました。たぶん緊張していたと思いますが、声と体が大きいので有利なのでしょう、「堂々としていた」という、初めてにしてはよい評価を得ることができました。

それと、セッションごとに「コーヒーブレイク」があります。ここで打ち解けて研究者どうしで意見交換をしようね、という意図なので、たいていどの学会にもあるようです。韓国のお菓子が出ていました。

韓国のお菓子たち

奥に見えるのはプチトマトですが、コーヒー飲みながらトマト食べる人はあんまりいないのか、最終日まで残ってました。

カスタードケーキ?

ハングルで「カスタード」(카스타드)と書かれています。中身は明らかに日本の

カスタードケーキ

このお菓子と同じなのですが、そもそもロッテは韓国企業なので、どっちかというと韓国のものが「本場」になります。味は全く同じでした。

チョコパイ

これもロッテの「チョコパイ」と同じ。몽쉘は日本語でいえば「モンスェル」でしょうか。チョコパイという名前じゃないのですね。こちらのようにアマゾンで売ってるみたいですよ。

マイチュー・ブドウ味

おもいきり「マイチュウ ブドウ」と書かれてます。こちらの森永製菓公式ファンサイトによると

以前より韓国にハイチュウを輸出で売っていたのですが、2004年に韓国メーカーが「マイチュウ」なるものを発売しました

とあります。つまりパ、パク……?ゲフンゲフン

夕方からポスターセッションが始まります。「学会」と聞いてみんなが想像するのが「オーラル」ならば、ポスターはだいぶ特異に見えるでしょう。1つか2つの部屋にみんながポスターを貼り、聞きに来た人に研究内容を説明する形のセッションです。中心に用意された軽食には明らかに「おつまみでしょ」というものが入っています。それもそのはず、入り口にはコーラ、サイダー、そしてなぜか「偉大なる黄金の炭酸麦茶」が用意されていたのですから。

イケメンポーズ

偉大なる黄金の炭酸麦茶(羅:carbonii dioxidum hordeum vulgare theae magnárum aureárum)のようなものが見えますが……。

会場にて-「何か」を持つ先生

※当研究室は青少年の健全な発達を応援しています。

自分の研究内容に近いものを探して質問しに行ったり、面白そうな研究をしているところに話しかけに行けるのがポスターセッションの味わい方です。オーラルよりも聴衆と発表者の距離が近いため、ちょっとしたぶっちゃけも聞くことができます。「装置はいくらですか?」「最終的な目標はどこですか?」「実験はどれぐらいの期間で計画しましたか」なども、だいたい答えてくださります。質問してみましたが、さすがに”expensive”が伝わらなかったのはショックでした。発音が悪かったのか、向こうが知らなかっただけなのか。
先生がなぜ私たちよりも研究内容を高みから俯瞰できるのかといえば、それは単純に知識が多いからだけではありません。こういう機会に他の動向を伺っておられるのです。
「アンテナを常に張っておく」ことの大事さを、かつて先生から教わったことを思い出しました。
面白い研究も紹介したいですが、それは研究室の例会でやればいいことなので、次に。

2日目は山内さんと一山さんの発表でした。ホテルの廊下を歩いたときにお二方の声がそれぞれの部屋から聞こえてきたので、どれぐらいお二方が一生懸命に練習しておられたか、私はよく存じ上げていました。
某阪大学で当研究室と同じ分野の研究をしておられるN先生の後ということでかなりの重圧があったとは思いますが、それにもかかわらず、私と違って原稿を見ずにすらすら発表しておられたのを見て、「さ、さすがです……」と、実力の差を痛感しました。これが大学院生と学部生の違いなのですね。

会場-山内さん発表

お二方とも、発表が終わった後は朗らかな表情でした。昨日と昼食のメニューは同じなのに、何倍もおいしそうに食べておられるのを見て、「みんな自分と同じように緊張するんだな」と感じ、安心しました。
午後からは完全に聴衆の中に溶け込みます。MTSAは割と小さ目の学会で、同時並行のセッションは2部屋分しかありません。自分たちの研究に近そうなものを選びました。
“invited presentation”はいわばお手本なので、発音もうまく、流暢で、内容も高度です。学生サイドは(全然聞き取れない英語の中から)なんとか自分が知っている単語を拾い上げ、プレゼン中の図表と組み合わせ、頑張って意味をくみ取ります。各国の訛りの違いを聞き取るいい訓練にもなりました。先生のプレゼンもちょうどこのときにありました。普段よくみる図表やよくきく単語が出てくると安心するものですね。
イギリスの方の発音が早すぎて全然聞き取れず自信をなくしていたら、同じく母語が英語と思われる人からしか質問が出ていなかったこと、フランスの方のフランス語訛りがすごかった(鼻に抜けるような発音で、onの音が”ヨン”に聞こえる)ことなどが印象的でした。

夜は一山さん、山内さんと焼肉を食べに行きました。ただの焼肉ではありません。「サムギョプサル」(삼겹살)という、分厚い豚肉の厚切りです。これがまた本当に分厚くて、一流ホテルの毛布みたいです。一山さんと山内さんはビールを頼んでおられました。日本のもののほうが濃くておいしいようです。

サムギョプサル
おいしそう!
山内さんと一山さん

韓国の焼き肉屋では基本的に客はあまり焼きません。日本では頼んで皿が出てきたらあとは放っておかれますが、韓国では店員さんが面倒を見てくれます。たまにこっちにやってきて、肉をひっくり返すのです。いい感じの焼け具合になったら避難場所に置いてくれるので、そこからとって食べます。どうでもいいことですが、色覚多様性のある方々(特に赤色に関するもの)は店員さんになれるのかなあ、と思いました。
これだけ食べて1人当たり千数百円なので、日本で食べるよりもだいぶ安いですね……。

3日目。この日は西山さんとキムさんが発表する日でした。そろそろ街のハングルにも慣れてくるころです。
相変わらずところどころしか意味がわかりませんが。

西山さんは入社式を終えて、そこからいろいろあってほぼ直接韓国に来られた、とのことでした。よりにもよって学会のタイミングと被るなんて……という感じですが、発表はつつがなく終わったようでした。将来を左右するイベントに現在の大事なイベントが挟まる形で大変だったと思いますが、そのキャパシティの高さに脱帽です……。

会場にて-西山さんの発表

キムさんは、本番前まで「あまり練習ができていない」というように謙遜しておられましたが、もうまったくそんな風に見えなくて驚きました。まず発音からして私と全然違うのです。例えるなら高校の英語教材、あるいはCarpentersの歌を聴いているかのような感覚を覚えました。その上当たり前のようにペラペラだし、質疑応答もそんな風にこなすしで、「こ、これが博士課程とB4の差かぁ……!くっ!!」と実感しました。私はその日、「学会戦闘力」をはかるスカウターを持ってきていなかったのですが、あきらかに実力の違いが際立っていました。キムさんに当ててもスカウターがぶっ壊れてしまう気がしますが。

会場にて-キムさんの発表

……まあなんにせよ、これで全員の発表が無事に終わったことになります。全員で何かを見にいく、といきたいところでしたが、天気があいにくあんまりよくありません。というか台風です。絶賛台風。波がものすごく荒れています。この波でサーフィンをしたら、サーフィン板ごと沖に流されそうな天気です。
「あぁ……せっかく明日は何もないのに……」とみんなが嘆いていました。

あいにくの天気

夜のBanquet。韓国の大学から来た方々と相席で、円卓に座りました。会場には100人ほどいたと思います。小さい学会だと聞いていましたが、それでも世界からこれだけの人数が集まってくるんだ、やっぱり国際学会ってすごいなぁ、と思いながら。なぜか昼とほとんど同じ料理たちでした。こういうのってだいたい違う料理が出てくるもんだよなと予想していましたが、まあそもそも豪華なので、全然気になりません。しょせんは男子大学生なので、食えればいいのです(ただし、個人差があります)。

私は相変わらずスモークサーモンを食べるだけの「機械」と化していました。隣のキムさんと「これ美味しいですよね」と話がはずみます。食もはずみます。

そういえば発表が終わって、食べてしかいないような。気のせいか?

宴も落ち着いてきたころ、何やら発表があるとのことです。ベストプレゼンターがどうの、ベストなんたらがどうの。全然関係ないな、と思いながら、ダメ押しのスモークサーモン4切れを口に運んでいるとき、なんか聞き覚えがある名前が耳に入りました。
“KENTA YAMAUCHI”
ん……?
ん??
ん!!!!
山内さんが「ベストペーパー賞」を受賞していたのです。ペーパーなのでたぶん予稿のことと思われますが、なんにせよものすごいことです。賞金は20万ウォン(だいたい2万円)。ほえ~、すごい……。

帰りは駅までのシャトルバスがホテルから、ということでそれに乗るつもりでしたが、台風が激しすぎてそれぞれのホテルまで送りのバスが出ることに。傘がぶっ壊れてしまうほど強い雨風でした。「日本人っていつも台風横にそれろ日本に来るな向こうに行けとか言ってるけど、『向こう』(中国とか韓国とか)の人もやっぱ困るんだよな、台風ってあんまりいいことないな」と思いました。ニュースでは数人ほど怪我人も出たらしいですし。

4日目。本当はこの日が一番楽しかったし一番書きたかったのですが、「学会報告」のはずなのに旅行日記みたいなこといっぱい書くと、いろんなアレがアレして、アレな意見が来そうなのでちょっと遠慮しておきます。ものすごくおいしいチーズタッカルビを食べて、ものすごくきれいな海を見て、ものすごく冷たいマンゴージュースを飲んだ、ということだけかいつまんで。

全員集合?
お店にて-のびーるチーズ
お店にて-チーズタッカルビ
カフェにて

夜は加藤先生もご一緒で焼肉へ(先生のごちそうでした)。相変わらず青唐辛子が出てくるんですが、これがまた辛いのなんの。日本では青唐辛子はほとんどお目にかかれませんが、こんなところにいたのか……。
そして韓国のお酒といえばやっぱりマッコリでしょう。甘酒とかどぶろくを彷彿とさせる見た目、味も微炭酸で甘くて飲みやすいので調子に乗って1杯半。度数6%と書いてあったから大丈夫かと思いましたが、駄目でした。すぐに悪酔いして気持ち悪くなって、座布団で横になりました。

胃からこみ上げそうで何もこみ上げない。寒気がとまらない。世界の上下左右が逆転している。

写真をいっぱい撮られました。恥ずかしい、はしたない、もうお婿いけない……。モンゴロイドはだいたいお酒弱い体質ですが、たぶん私は「モンゴロイド真打 ver.1.23 最終改訂版 社長チェック済」なんだと思います。韓国に来てまで悪酔いしなくったって。

という感じで、私の初の国際学会、海外旅行はあっという間に過ぎました。
港で文字(ハングル)を見ながら「ハングルをこうしていっぱい見るのもこれが最後かぁ」と思うと、哀愁やら何やらが感じられます。文字体系こそ違うものの、そこに住む人達は日本と何にも変わらなくて、日本人と同じように日常を過ごしていました。最近の日韓情勢のニュースにいろいろと思うところはありますが、国民というか対個人ではお互いに仲良くしたいものだなぁ、としみじみと感じました。

いろんな形のハングル

次来るときはぜひともプライベートで、しかももっと韓国語が読み書き話しできるようになってからがいいですね。一時的ではありますが、ことばが全くわからないのがどれだけの不安になるか、よく実感できました。博多に帰ってきて、日本語表記だらけの街を見た時、ようやく無事に学会が終わったんだという気持ちになりました。
……まぁでも、あと半年ぐらいは日本でいいですね。海外は楽しいですが、普段の環境と違いすぎるとけっこう疲れることもわかりましたし。もしかしたら私に海外生活は向いていないかもしれません……。